『僕に伝説はつくれるか?』

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第二話

続きー

「隊長たち遅いねー」
暖炉の上に掛けられた大きな鍋をかき混ぜながら少女は何とも無しに言い放つ。その様子を本を片手に傍らでみていた灰褐色の肌の女が相槌をうっている。
少女は返事を期待するでもなく鍋の中を覗き鳥の肉が焦げ付かないようにと細心の注意を払っている。
「でもムックさんが隊長を飲ませて酔いつぶれさせておいて、面白いからって店に置いて行こうなんて言うからナチャーさんが余計な手間をかけることになるんですよ」
ムックと呼ばれた少女は、コンソメ風味のスープを味見しながら話を聞いている。満足そうに頷きながら、最後の仕上げとなる自慢の香草を鍋の中にちぎって放り込みつつ言った。
「だってー。ダモさんもセレさんも面白がってたし~カレッツァさんだって止めなかったでしょ?」
ムックと呼ばれた少女は厳密に言うと少女ではない。このアデンに住む四大種族のうちの一つドワーフ族の列記とした成人女性だ。ドワーフ族は人間よりもやや背が低い種族で身長が120センチほどの小人だ。しかし、小柄な体格をしてはいるがガッチリとしており、種族全員が戦士であり商人であり工芸家でもあるという大変器用な種族だ。男性は顔中がひげで覆われており、他の種族に比べても年齢が上に見られることもあるが、どういうわけか女性は成人しても人間の少女のような容姿にしかならない。この事がドワーフの女性の地位を一般的に特殊なものにしていた。
(何も私も同罪みたいな言い訳を言うこともないのに…)と灰褐色の肌をした女性は思った。この女性はダークエルフ族で仲間からはカレッツァと呼ばれている。カレッツァはムックに「確かにそうかもしれませんね」と言いながら、大きなソファーの隅っこに座り片手にもって読んでいた本に目を落とした。
杉のまだ新しい匂いの香るこの大きな部屋には、ランタンと暖炉の明かりで十分に明かりがとられ、十数人の雑多な種族の男女がチェスや読書、など思い思いの事をやりつつも不思議なことに静かな時間がそこには流れていた。

半月の薄明かりの中、細い道を歩く者たちがいた。既に人も通らなくなった街道の更に脇道を獣の吐く息と男女の呼吸音、草原に潜む虫の声、更にもう一つ…地鳴りのような音が聞こえる。当初竜の子の背に縛られた地鳴りの主と話をしていたマッガーレも、山の急斜面をほぼ真っ直ぐ登っていくこの道に差し掛かってからは言葉が無くなった。(まったくどこまで登る気なんだ?)ギランの街を出てから既に半刻、山の斜面の道から後ろを振り返るとギラン街壁の歩哨の持つ松明の明かりが見てとれた。この場所は人の背丈ほどの草しか生えておらず大きな切り株がそこかしこにあることで、かつてはここに森があったことを語っていた。ギランの林業ギルドが背の高い樹木を伐採したためというわけではない。ギランの街を実質取り仕切っている評議会の命により行われたことだと、地鳴りの主の男に教えてもらった。周辺の山の木を取り去ることにより見晴らしを良くし、いざ街の門を閉ざし篭城した場合に敵の動きを見やすくするためのものだそうだ。つまりギランの街は常に外敵からの襲撃に備えているということになる。
「着いたわよ」
エルフ娘のナチャーはそう言いながら前方を指差した。そこには切り立った崖の下に崖に張り付くような山小屋があった。煙突から薄く煙が立ち上り明かりが漏れていることから、そこには誰かがいることが想像できた。どうやらここが彼らがアジトと呼ぶ場所のようだった。
「歩かせて悪かったわ。私たちのような貧乏血盟は街に居住するほど余裕がないのよ。」
何故か恥ずかしそうにこのエルフ娘は聞いてもいない言い訳を始めた。このアデンにはいくつもの国家があり、国家はその領地に居住するものから税金や貢物を徴収しながら領土を維持している。基本的には殆どの人々は流浪の民でない限り国家やその傘下の街に依存して生きている。ただその枠に当てはまらない連中もいる。一般的には『冒険者』と呼ばれる本来は流浪の民だ。アデンの国々は近年の戦乱の悪化に伴い、この冒険者たちを自身の兵や傭兵として使い始めた。元々怪物相手に略奪行為の為に剣技や魔法を使い、戦いにも長けていた彼らは次第に国家内で勢力を拡大、自身の身分の保証の為集い集まり始めた。それが血盟である。冒険者たちは血盟に所属し血盟単位で時には兵となったり、商人の護衛をしたり様々な行動をするようになっていた。
「このアデンには幾千もの血盟が存在するの、私たちの血盟はこれでもマシな方よ」
肩をすかすような手の動きをしつつ彼女はこの話を終わらせる。その頃には“アジト”の敷地への入り口らしい柵を通り過ぎる。マッガーレは街から思ったよりも歩いたものだなと思った瞬間、建物の入り口へと続く道が青白い光に覆われた。「なんだっ!?」突然の光に目が幻惑されながらも目を凝らす。どうやら建物へと続く道の両脇には杭が打ち込んであり、その先端に据えられている水晶が光を発しているようだった。
「怯えることはありません。簡単な光の魔法ですよ。」
建物から一人の男がこちらへ近づきながら話し掛けてきた。
「“砂漠の鷹の巣”へようこそ客人、歓迎します」
10メートルほど近づくとそこには青白い光に照らされた道に、若い男がいることが分った。金のラメの縁がはいった真っ赤なローブと、決して健康そうではない顔色の若い男は一目見て高位の魔法使いだと分った。
「飛天さん!待っててくれたの?」
ナチャーが嬉しそうな声を出す。
「いえ、ナチャーさん。星を見ていたら客人ありとの相がでたので待っていたまでです。」
ニッコリと笑みを浮かべながら魔法使いは否定する。ナチャーはちょっとふくれながら、竜の子の手綱を魔法使いに押し付けるように渡すと言い放った。
「あ~疲れた。後は飛天光 副長に任せるわ。よろしくね!」
「わかりました」
やんわりと返事をすると魔法使いはマッガーレの方を向き声をかける。
「客人、竜の子の背に乗せられた男を下ろしていただけませんか?何分私は力がないもので申し訳ありません」
「あ…ああ良いよ」
後少しで食事にあずかれそうだ!マッガーレは魔法使いの言葉よりも、建物から漂ってくる良い香りに突き動かされ男を竜の子からテキパキと下ろした。


…中々進まんが今日はこれで終わり~
週に一回くらい出していければと思っておりやす。
by desert-hawk | 2007-08-04 17:17

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