『僕に伝説はつくれるか?』

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第3話

「あの~おかわり良いですか?」
鶏肉のスープを食べきったマッガーレは、申し訳なさそうに3度目の器を差し出した。
「あんた良く食べるねー遠慮ってものを知らないの?」
切れ長の目を更に細めて照れ笑いをするダークエルフの青年に声を掛けながら、ムックは嬉しそうに器を受け取り自分の作ったスープを注いだ。数十人が集まれるくらいの広間の片隅に据えられたテーブルで、器を受け取ったマッガーレはスープを胃袋に流し込み固いパンを詰め込んだ。その様子をムックは嬉しそうに見ている。そして、3度器を空にしたマッガーレはようやく大きく一息ついた。そのタイミングを待っていたかのように副長と呼ばれた魔法使いが声をかけた。
「落ち着いたところで挨拶でも宜しいでしょうか?私は血盟『砂漠の鷹』の副長を務めております飛天光と言います。」
慌てて立ち上がりマッガーレも返す。
「あ・・・あの、北のエニア村のマッガーレと言います。街に入れず困っているところ声をかけていただきありがとうございました!」
しっかり話そうとしたマッガーレは大声が出てしまった。部屋中の者が手を止め彼に視線を注いだ。その部屋の様子気づき思わず顔面に血が上る。魔法使いが片手を上げると皆が再び各々の事をやり始める。
「エニア村というと完全にダークエルフ領ですね。ギランへは何用でいらっしゃったのですか?」
やわらかな口調で話してはいるが、その目は全ての真実を把握し掴み取ろうとする意思が感じられた。人間の魔法使いというものは非常に狡猾でずる賢いだけでなく、時にはエルフ族以上の魔力を持つものが生まれるという。そんな長老たちの話を思い出したマッガーレは隠しても無駄かもしれないと思い正直に答え始める。
「実を言うとまだ何も考えていないんですよね…」
魔法使いの額がピクリと動いたのを見て慌てて付け足す。
「いや…その…ギランの街に行けば何か大きなことが出来ると思って来ました。長老たちや両親は僕が人間の街へ行く事に反対したんですが、やってみなきゃわからないでしょう?」
自分が旅に出た理由を出来るだけ細かく正確に話し、途中から自分が憧れている英雄や故郷出身の成功者の話や、自分がどのように成長してきて、どんな考えを持ってどんな悩みを持ってきたかなど聞かれてもいないことも話し続けた。
「…という感じでこの場所へやってきたわけなんです。」
テーブルに置いてある水差しから自分のコップに水を注ぎ、一気に飲み干した。そして魔法使いの反応を上目遣いに伺う。
「…あの?何かおかしい所がありましたでしょうか?」
魔法使いは杖を小脇に抱えながら、難しそうな顔をして沈黙を保っていた。やがて身体が小刻み震えてきた。
「…クックックック…」
無表情だった顔にしわが入り、弾けるように魔法使いが笑い出す。
「あーっはっは!」
その笑いをきっかけに、いつの間にか周りに集まっていた「砂漠の鷹」のメンバーが一斉に笑い始めた。杉の香りのする大広間は笑い声に包まれ、ひとりキョトンとしたダークエルフが訳も分からず長く尖った両耳を垂らして愛想笑いを浮かべていた。やがて笑いつかれたのか魔法使いは息を整えてから話し始めた。
「いや、失礼しました。あまりに真正直なのであなたを警戒していた自分が馬鹿らしく思えてきます。実は最近、血盟間の間者が多くあると聞いたので確かめたかったのですよ。」
そう言いつつ魔法使いは謝罪した。状況が理解できないマッガーレが目を白黒させていると甲高い声が聞こえてくる。
「問題なんてあるわけないじゃない!?私がそんなドジ踏むわけないもの!」
いつの間にか広間へ戻っていたエルフ娘のナチャーが自慢気に言う。確かにその通りだという風に、この場に集まった男性陣のみが相槌を打つ。マッガーレはようやく自分がこの血盟に間者として疑われていた事を理解した。自分がそんな風に思われたのは不本意ではあるが、さらにその疑いがこの様なかたちで晴れるのは気分の良いものではなかった。子供のように不機嫌さを隠さないマッガーレに最初に声を掛けたのは同族の女性カレッツァだった。
「あの…マッガーレさんと言いましたね?」
声を掛けられマッガーレは視線を向ける。深い緑色に金のレリーフが入ったローブはダークエルフにしては肌の露出が少なく、妙に人間臭い衣装だなと思ったが、容姿のほうはダークエルフの中でも特に端正な顔立ちをしていた。しかし、化粧が薄いせいかとても地味に感じた。
「何ですか?」
不機嫌そうに答えるマッガーレの隣に、カレッツァはフワリと座る。一瞬バラの香りがしたように感じドキリとする。
「良かったら私たちの血盟に入りませんか?」
「え!?」
いきなりの話の展開に思考がついていかない。
「そうね!私も賛成するわ!」
ナチャーも満面の笑みでカレッツァの意見に同意する。スープを仕込んでくれたムックも続けざまに言った。
「やったー!子分がまた一人増えたー!」
「誰が子分なんだ!?」
巨漢のオークがムックの襟首をつかんで持ち上げる。それを振りほどこうと暴れるムックに周囲の者がはやし立てる。広間はあっという間に喧騒に包まれた。(なんなんだ?僕がこの血盟に?大体血盟ってものも良く分からないぞ?)考えのまとまらないマッガーレの隣にまた一人別の、今度は肌の露出の激しいダークエルフの女性がカレッツァと挟み込むように座る。
「…私も歓迎しよう。同郷の者が増えるのは良いものだ。」
無表情にそっぽを向きながら話しかけてきたその女性は、真っ赤な瞳に夜の闇のような漆黒の髪をした不思議な雰囲気をかもし出す女性だった。
「レドと呼んでくれ。」
「あ…マッガーレです。よろしく。」
レドと自己紹介した女性を反対側に座っていたカレッツァが補足する。
「レドさんは冒険者の間で“赤い幻影”と呼ばれているちょっとした有名人なんですよ」
その通り名を聞いた時マッガーレはドキンと自分の心臓が鳴るのが聞こえた。(“赤い幻影”だって!?僕の村出身の成功者じゃないか!)アデンでも有数の弓の使い手でその腕は泳いでいる魚の目を射抜くとも言われている。旅人が伝える数々の彼女の武勲をマッガーレは何度あこがれて聞いた事か分からない。(もしかしたら僕はとんでもなく幸運なのか?伝説の人物と同じ組織に入る機会を与えられるなんて!)そう考えを巡らせる彼とは関係のないところで話は進んでいく。
「隊長、彼は私が面倒をみますので入隊を許可してもらえますか?」
カレッツァはいつの間にかテーブルを挟んで、頬杖をついて様子を伺っていた長髪の青年に話しかけた。上半身裸で下に薄手のパンツをはいただけの格好の隊長と呼ばれた青年は答える。
「本人が望むなら良いとおもうよ。来る者は拒まずがうちのモットーだし。」
「その体質が危険なんですよ」
魔法使いの飛天光が絡む。青年はばつが悪そうな顔をしたあと、ごまかす様にマッガーレに向き直る。先ほど竜の子に縛られ泥酔していた青年とは思えないまっすぐな視線に、マッガーレは思わず背筋を伸ばしてしまった。
「砂漠の鷹に入るかい?」
この場で騒いでいた全員がマッガーレの次の一言に注目した。
「・・・あ・・・あの・・・お願いします。」
自信無げな入隊宣言の後に歓声が湧き上がる。その夜、自分の家となった杉の家で彼は気を失うまで生涯初めての酒を味わった。






だんだん短くなってきたなぁ~
by desert-hawk | 2007-08-16 21:20

リネージュ2でのいろいろ話題


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