『僕に伝説はつくれるか?』

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第4話

「ふう…」
生ぬるい水が喉の奥へと落ちるのを感じながら男はため息をついた。腰に下げた羊の皮の水筒の中身は既に半分を切っている。(こんなはずでは無かったのにな…)そう思いつつ男は冷たい石壁に背中をもたれかけ座り込んだ。彼の憂鬱の原因は傍らですえたマントに身を包み寝入っている二人だった。
「幸せそうに寝ているのが、また腹が立つな。」
あえて声に出して不平不満を言ってみる。しかし、二人とも気持ちよさそうな寝息を立てるばかりだ。彼の名はハルトといった。首都アデンの紋章官の家に生まれたが、十回目の誕生日を迎えるころ、半ば無理矢理にアインハザード神殿の修道僧として修行する羽目になってしまっていた。元々信仰心など無かった彼だが、要領と機転だけは長けていたため気がついたら見習いとしては主席の地位に着くことになってしまっていた。このままでは一生寺院暮らしになることを察した彼は、『修行の旅』と称してアデン各地を気ままに旅をしてまわる様になっていた。アインハザードの神官として振舞えば食べるものにも寝る所にも決して困る事は無かった。それはまさに彼が求めた自由な生き方そのものだった。しかし、ギランの大きな切り株のある酒場で、自称騎士の男と出会った時から彼の人生は大きく変わってしまった。当時、国家の行く末さえも左右し始めていた『血盟』というものに興味がわいていた彼は、その血盟の一つの長と称する騎士と話をしてみる事にした。話してみると分かったがはっきり言ってたいした事が無いとの結論に達した。知識も記憶も学も全て自分の方が上回っているとはっきりと分かったのだ。しかし、その血盟の長は自分の知らない事を多く経験しているようだった。
「ねぇ神官さん、竜の渓谷の奥に行ったときなんだけどさ、真っ赤な角の生えてる巨人を倒したんだけどさぁ~あれって巨人の仲間なのかなぁ?」
「ん…うん…多分そうじゃないかな?」
「悪魔の島で動く人形に襲われたんだけどさぁ、あれってどういう仕掛けなの?」
「あ…いや…その…」
「神官さんでもわかんないの?」
「いや…ちょっと待って、今思い出すから…直接見れば思い出せると思うんだけどね」
「そっかぁ~じゃあ見に行く?」
なし崩し的に『冒険者たちの狩場』と呼ばれる危険な場所へ連れて行かれ、気がついたら血盟の一員として扱われていた。(この血盟の連中は、なんか調子が狂うんだよな)そう思いつつ既に三ヶ月が過ぎようとしていた時、国王からの使者が書状を携えてやってきた。使者は勢い良く檜で出来た分厚い扉を開けると、挨拶も無く血盟の長である盟主を呼びつけ告げた。
「国王陛下の名のもとに砂漠の鷹盟主に命ずる。」
偉そうに書状を読み上げる使者に対し、片膝を付きうやうやしく頭をたれる盟主。血盟員もそれに習うか気に入らないものは広間を出て行っていた。血盟とは冒険者の集合体であり、また軍隊でもある。さらに一種の組合や企業のような役割をも果たしていた。アデンにある多くの数人規模の小さな血盟はどこに所属するでもなく、その場その場で仕事を選び何でも屋のような仕事をして利益を得ていた。しかし、数十人から数百人規模の大きな血盟になると、もはや扱いは軍隊と同等になりその豊富な組織力で莫大な報酬を得ているという。ハルトのいる血盟『砂漠の鷹』はその中間に位置しており、規模は40人ほどであった。その規模の血盟に多い体制が国家や城、街などとある一定の契約を結び、その統治者からある程度の特別な恩恵を受けつつ、統治者からの様々な依頼を請け負っている事があった。無論、両者の利害が一致している間だけの一時的な契約ではあったが…血盟の長である盟主ウィランは使者から預かった国王の書状に目を通したあと、無造作に大きなテーブルに放り投げる。それを副長の魔法使い飛天光が拾いなおし素早く目を通した後口を開く。
「誰を行かせます?」
背もたれの付いた樫の木のイスに乗馬するように跨ったウィランは、頭をかいて思案をめぐらせている。飛天光から書状を受け取ったエルフ娘のナチャーが、嬉しそうに書状の添削を始めた。
「正規の書状に脱字があるなんて、この国も先が長くないわね。」
「その程度の相手としか我々が見られていない。とみるのが正解でしょう。」
ハルトは思わず口を出してしまった。ムッとした表情で自分を見るエルフ娘から視線を外して目を泳がす。その時、盟主ウィランと視線が合ってしまった。(しまった!)ニヤリと笑う盟主に、この仕事の実行部隊にあっさりと任命されてしまった。その後の展開は早かった。今回の仕事は敵対勢力に気づかれないように行動する事が求められるという理由から、ハルト以外は隠密行動に長けた2人が指名された。一人は飛天光と共に“砂漠の鷹”の副長であるダモンというトレジャーハンター。トレジャーハンターは人間の中では特に隠密行動に優れており、単独で敵勢力奥地まで侵入し偵察任務をこなす事を得意とする。またその名の示すとおり、組織に所属せず一人で活動する多くのトレジャーハンターは、秘境に隠された財宝を探す事にも長けているという。ただこのダモンという人物は、個人的にハルトはあまり一緒に行動したい人物ではなかった。もう一人の副長である飛天光と比べあまりにも自由奔放であり、行動に原理や法則が無いのである。“何故その様な事象が起こるのか?”そこから全ての考えが始まるハルトにとって理解不能な人物だった。そしてもう一人は、プレインズウォーカーのセレシオンというエルフの女性だった。プレインズウォーカーとはエルフ族の軍において斥候として重要な役割を果たしており、数人から数十人で行動し、本隊の到着前に敵の大軍を混乱状態に陥れ、竜の子を上回るといわれる速さで戦場を離脱する撹乱部隊だった。500年前の人間とエルフの戦争において、圧倒的多数の人間の軍とエルフの軍が互角以上に戦えたのは彼らのおかげだとも言われていた。もっとも数十倍の兵力を有する人間の前に次第に消耗し、エルフ族は大陸の中心から追い出される結果となったのだが…しかし、その様な栄光の歴史とは全く関係が無いかのごとく、このエルフの女性はいつもぼーっとしているように見えた。いつだったかセレシオンがアジトの庭で昼寝をしている時、顔にいたずら書きをされた時も全く気づかず寝入っていた。もっともその顔を見て大笑いしていた者たちは、全員が首の筋を違えさせられてしまったが…この面子で大丈夫なのだろうか?ハルトの不安はすぐに的中する事になる。
「えっと…こっちだっけ?」
テラテラとした光を発する石を積み上げて作られた回廊。その先頭を松明を片手に自信満々に歩いているかのように見えたダモンが、いきなりこちらを振り向きながら聞いてきた。
「知らないわ」
セレシオンが間髪いれずに言い返す。助けを求めるように自分を見つめてくるダモンに首を横に振って答える。
「そっかぁ~これは道に迷っちゃったね!」
「迷っちゃったじゃない!」
軽やかにまわし蹴りをダモンに決めるセレシオン。わーいなどと叫びながらおっかけっこを始める二人に軽く頭痛を覚えながら座り込むハルト。
「とにかく、休みませんか?」
「賛成!」
「やった!」
二人は口々に言いながら、背負い袋にある干し肉を頬張り始める。そんなやり取りがあったのが三日前だった。目的を果たすどころか完全に迷宮の中を彷徨い始めていたのだが、相変わらず2人はあの調子であった。
「幸せそうに寝ているのが、また腹が立つな。」
この2人は頼りにならない!ハルトはこの窮地をどのように切り抜けるか頭脳をフル回転させ考え始めた。(何とかしなきゃ。こんなところで終ってたまるか!)その頃、地上では四日目の太陽が昇り始めていた。
by desert-hawk | 2007-08-20 18:48

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